俺の妹が可愛すぎて。


「………なんかすっげぇ優花っぽい」


俺が目に止まったのは、一センチほどのピンクゴールドの小さなクマが誕生石を抱きしめているネックレスだった。

少し顔を傾げて誕生石を抱きしめ、こちらを見ているそのクマを見た瞬間、頭に優花が浮かんだ。


可愛いらしい仕草のそのクマのネックレスをつけてる優花が、なぜだか容易に想像できたのだ。


「…………」


しばらく、そのクマと睨めっこ状態が続く。

だって、また俺は優花のことを考えていたからだ。

何気ないこのみやげ屋で、気分転換に入っただけなのに、このクマはまた俺に優花を思い出させたからだ。


だけど、にっこり微笑みかけるそのクマがどことなく優花に似てる気がして、思わずニンマリしてしまった。







* * *


「……何、乗る〜?」


一休みした俺と透子は、プラプラと園内を歩く。

まだお化け屋敷しか入ってない。

だけど絶叫系が苦手な透子に無理やりジェットコースターに乗せるわけにもいかないし、無理やり乗せたところで吐かれても困るので、ここは透子に任せるしかない。


「…………」


俺が質問しても、透子は黙ったままだった。

ってか、トイレから戻ってきてから透子はなぜかずっと黙ってまま俺に着いてきていた。


「………コーヒーカップでも乗る?」


透子は首を横に振る。


「………メリーゴーランド?」


それも首を横に振る。


「………どした?透子。気分わりぃの?」


そう訊いても、透子は黙ったまま首を横に振る。


透子は表情が豊かでないだけに、何を考え、何を思っているかわからない。

いくら幼馴染でも、晴が単純過ぎるせいか透子は昔からこういう感じだから感情を読み取るのが難しい。

自分からもあまり感情を出さないから、こっちから訊かなければなかなか透子の気持ちを感じてあげられない。





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