俺の妹が可愛すぎて。


それはある日のこと。


突然だった。



『……母さんたち、週末一泊温泉旅行に行くことになったから、ユキ、優花ちゃんと風馬をよろしくね』


満面の笑みで母さんに言われた。


『はっ?!なにそれ、訊いてねぇけど』

『言ってないも〜ん。ケーゴがお休み取れるか微妙だったから。でも、お休み取れたから急遽決まったの♪ここんとこ、二人とも忙しくてなかなかゆっくり出来なかったし。いいでしょ?』


余程嬉しいのか、身体をクネクネしながら、笑顔で話す母さんにダメとはとても言えない。

それに、新婚旅行だってまだ行ってなかったしなぁと渋々了承した。


まぁ…風馬もいるし、大丈夫だよなと思っていたのに……。





母さん達の旅行当日、母さん達が出掛けた後、洗濯やら掃除やらをしていると、風馬が声をかけてきた。


「なぁユキー」

「なんだよ、朝っぱらからでっけぇ声出して。今、忙しいんだけど」


ベランダで洗濯ものを干していた俺。

五人家族になって、母さんとの二人暮らしの時よりも圧倒的に増えた服の量に悪戦苦闘していた。


「……ちょっと出かけるわ〜」

「へ?マジで?晩ご飯までには帰ってこいよ?」


そう言うと風馬はなぜだかニンマリと怪しい笑顔になる。


「いや、今日遅くなるから」

「は?なんで」


もしかして……と思った俺に、いち早く気づいた風馬は焦って応える。


「あ、ちげぇよ!麻依とじゃねぇから!関口と遊びに行くんだけどさ。…俺、帰り遅いほうがいいっしょ?」


相変わらずのニンマリ笑顔。


こいつはいったい何を考えているんだろう。

そんな笑顔をする時は、大概ろくなこと考えてない。きっと。


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