俺の妹が可愛すぎて。


『…っんと、お前って昔から嘘つくの下手だよな』


ロッカーに左の重心をもたれかけさせた晴は、一生懸命シャツのボタンを留める俺の顔を覗き込む。


『……ユキは嘘つく時、目合わせねぇの。……幼なじみ、なめんなよ』


俯きがちの俺の視界の片隅に、怪しく笑う晴が映った。


『……前に保健室で俺、ユキに訊いたじゃん。優花ちゃんのこと、好きなのかって…。あれ、なんとなくユキを試したんだよな。……そしたら、案の定訊いた途端下向きやがって…。……そん時からそうなのかなって、うっすら感じてたけど。……今、二回目訊いて、また目合わせねぇから確信したわ』


腕組みしながら、自信満々に言う晴に否定出来なかった。

否定しようとすれば、俺はまたきっと晴が言うように目が泳ぐ。

もう、嘘が通用しない。



『……俺、優花ちゃんへの恋、諦めるわ』


あれだけ恋に熱くなっていた晴がそんなこと簡単に言うなんてビックリして顔をあげると、晴はさっきとは違う優しい笑顔で言った。


『……ユキには敵いっこねぇから』


晴が言うようなことがあるわけないと思った。


優花は俺のこと、好きなんかじゃない。


だって、優花は俺のこと『お兄ちゃん』って思ってる。


だから間接キスもするし、手だって繋ぐ。


それは、『お兄ちゃん』だから。


優花が言ったんだ。

間接キスのことで晴に訊かれた時、

『お兄ちゃんだから気にしない』って。


もう……優花ん中では、俺は『お兄ちゃん』ってカテゴリーになってる。


だから、優花ん中では俺をそれ以上に思うことなんてない。


例え、俺がどれだけ願ったって。






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