俺の妹が可愛すぎて。


* * *


外へ出掛ければ、偶然に会うという確率は高くなるわけで……。


「あ、透子ちゃん!」


優花が朝まで気になって読んでいた本の著者の他の小説が読みたいと言うから、本屋に来た優花と俺。

そこで偶然、立ち読みをしていた透子に出くわしてしまった。


「……あ、栗原さん。………ユキも」


俺より先に優花が透子の元へ近づいていったもんだから、後から俺に気づいた透子は少しだけ気まずそうに俺を見た。


「透子ちゃん、昨日貸してくれた本すっごく面白かったよ。他の小説も気になって来たんだ〜」

「……そうなの?なら、他の小説も持ってるから貸してあげるよ」

「えっ?ほんと♪?嬉し〜♪」


優花は何の事情ももちろん知らないから、透子となんかワイワイしてるけど……

あの遊園地デートで透子から告られてから、正直会話らしい会話をしていない透子と俺。


俺のことが好きだと告られ、答えに迷っているところへ晴が来たもんだから、結局俺は透子に何も答えられていないまま今に至る。


学校でも、部活動でも、俺と透子は話すことはほとんどなかった。


もともと口数の少ない透子だし、幼なじみとはいえ、普段から話すことなんてしれているし。

そのせいか、特に周りか不思議がられることもなかった。

何かに急かされるわけでもないから、結局俺は透子と話す機会すら作らなかった。

…というより、透子と何を話して、どういう返事をしたらいいのかまだ迷っている自分がいた。


「……あ、そのネックレス可愛いね」


透子が優花のネックレスを指差した。


「でしょ?これ、ユキちゃんにもらったの」


そう優花が言った途端、透子の無表情の顔が一瞬だけ曇った気がした。




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