俺の妹が可愛すぎて。




あたしは勝手に、幸せな夢を見ていただけなのだろうか。



朝、目を覚ますともうユキちゃんは起きていた。


昨日のことが本当か夢なのかただ知りたかっただけだった。


夢じゃないって確認したくて…


彼に「本当だよ」って笑ってほしくて…。


「……覚えてないの?」と訊いたあたしに、返事をした彼はあたしの欲しい言葉をくれなかった。



『……酔っ払ってて覚えてない』



酔ってるのは、あたしだってわかってた。


それでも、彼はあたしを好きだと言ってくれた。


酔っ払っていても、それは本当の気持ちで夢じゃないって思ったのに……。


あたしが覚えていたって、彼が何も覚えていなければ、それはあたしの夢と似たようなもの。


酔っ払って、男女が2人きりでベッドの上にいれば、あたしじゃなくても起こりうることなのかもしれない。


彼の「覚えてない」という言葉を訊いて、あたしは逃げるように部屋を飛び出した。


飛び込んだ洗面所にバタンと勢いよくドアを閉めて、ドアに背を向けると、なんだか涙が溢れてきた。



彼の言葉も、彼のキスも、

彼の手の温もりも思い出せば、まだ感触が残ってる。




『……覚えてない』なんて……。




じゃあ、あの言葉はなんだったの?


あのキスは?あの温もりは?



嬉しくて、幸せな気持ちになって舞い上がっていたのはあたしだけだったんだ。



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