俺の妹が可愛すぎて。


日陰の場所でお弁当を広げ、たわいもない話をしながら食べていたが、透子ちゃんは話しにくいのかなかなか本題を切り出さない。


「……透子ちゃん、そういえば相談って?」


言い出しにくそうな透子ちゃんに、あたしから話を切り出した。


「……あぁ……うん。……そのことなんだけど……」


透子ちゃんは俯いた。


透子ちゃんのペースに合わそうと、しばらく待っていると、意を決して言った透子ちゃんの言葉に、あたしは言葉が出なかった。


「……あたしね………


……ユキのことが、好きなの」



透子ちゃんは恥ずかしいのか、顔を赤らめて言った。



「………栗原さん…もしかしたら気づいていたかもしれないんだけど…。ずっと前からユキが好きなの」


今の今まで気づかなかったあたしがバカなのかもしれない。


ユキちゃんと透子ちゃんは幼なじみなんだし、あたしがユキちゃんを知るずっと前から透子ちゃんはユキちゃんを知っている。

それでなくても、透子ちゃんからはよく『ユキはモテるんだよ。本人は全然気づいてないけどね』なんて話を訊いていたから、他の女の子たちからも告白されていたようだし……

一番近くにいる透子ちゃんは例外だなんて…どうしてあたしはそう考えてしまったんだろう。


「……栗原さん……協力してくれる?」


そう真剣に透子ちゃんに言われ、断れるはずがなかった。


だって今、あたしが「あたしも、ユキちゃんのこと好きなの」なんて言ったら透子ちゃんを困らせてしまう。


「一応、兄妹なんでしょ?」って言われるだろうし、それが現実。


何の問題もなく恋できる、ユキちゃんと透子ちゃんの関係が自然。


あたしがユキちゃんを独り占めしたい、ユキちゃんを誰にも渡したくないって想うのは、不自然。


だって……ユキちゃんは『お兄ちゃん』なんだもん……。



「……うん、もちろんだよ。透子ちゃん、頑張ってね」


ようやく絞り出した言葉と、笑顔を透子ちゃんに見せると、透子ちゃんは「ありがとう」って笑った。


そんな透子ちゃんが羨ましくて仕方なかった。





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