俺の妹が可愛すぎて。


「……さっきからため息ばっかで鬱陶しいんだけど。どうにかなんねぇの?」


部活動の柔軟中、俺の背中を押しながら風馬が呟いた。


「……いや、どうにかなるもんならどうにかしてるし」


もうほぼ逆ギレに近い言い方で、そう言うと背中を押す風馬の力が強くなって「いてぇ〜…」と悲鳴に近い声が出てしまう。


「……やっぱ土曜日、ユキ、優花になんかしたんじゃね?おっぱい触ったとか?」

「……かもしんない。いや、マジで覚えてねぇの。……覚えてないって言ってたから、なんか距離置かれてる気がするし」


あの時から優花は俺に対して、なんかよそよそしい。

というか、避けられてるような気がする。

今日の朝だって先に学校行っちゃうし、さっきだって、手を振り払われた。


土曜日の夜、優花に何かをした…もしくは何かを言ったのは多分間違いない。


だけど、訊こうとしたって優花はあんな態度だし…何かとんでもないことをしてしまったのではないかと真実を知るのも怖くなる。


「……しかも…あれ、校門のとこにいたの、成宮っしょ?」


風馬がポツリ呟く。


「……なみや?」

「……ユキは知らねぇか。アイツ、成宮 剛って言って、父さんの昔の恋人の息子。ずっと優花につきまとってるみたいでさ。……何回か俺も声かけられたわ、『優花ちゃんの弟くんだよね〜よろしく』って」


優花と知り合って間もない頃に、駅で優花がアイツに絡まれてたのを助けたことがある。

その後、優花に色々訊いたけど、名前までは訊いていなかった。


人の顔を覚えるのは得意だから、少し容姿が変わっていたけどすぐにわかった。



成宮は何の用があってあそこにいたんだろう。


優花と何の話をしていたんだろう。


……今だって。


アイツと優花は二人でいるのかもしれない。


そう考えると、ため息は止まらなかった。


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