俺の妹が可愛すぎて。


事態が大きく変わってしまったのは、夏休みに入ってからだった。


夏休みに入って間もなくして、俺らサッカー部は毎年恒例の夏合宿へと向かう。



優花が部活動に出なかったのは、あの日だけだった。

だから、もちろん夏合宿にも一緒に来るわけだけど……

でも、やっぱり俺と優花の間には見えない穴がぽっかりと空いているようで、距離を縮められていない。


あの日だって成宮って奴とどうなったのか訊きたかったのに、優花に避けられている気がして訊けなかった。


母さん達が旅行に行ったあの夜…


確かに俺と優花の距離が縮まった気がしたのに……。


合宿までの期間、風馬に『さっさと訊きゃ〜いいじゃん、グズ』と散々けなされ続けていたが、

振りほどかれた手がショック過ぎて、怖くて前に進めない。


こんなにも俺って気弱かったっけ?って、今になって気付く。


性格上ウジウジしたりするのが一番嫌いなはずなのに、優花のこととなると弱くなる。


優花を傷つけたくない、怖がらせたくない……


そう思えば思うほど、何も出来ない自分が情けなかった。



「みんな、集合してるか〜?」


合宿へと向かうバスの中、席に座った俺らに、運転席側から先生が声を上げる。



優花と透子は前の方の席に座り、一番後ろの席に、風馬、俺、晴、持田の順で席に着いた。


もう……バスの中までこんなに離れるなんて…とため息しか出てこない。


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