俺の妹が可愛すぎて。


「……多分、いつもの俺ならすぐそうするんだけど……あれから明らかに避けられてるし、目だって合わそうとしないし……成宮って奴が来たときだって、手振り払われてさ……なんかそれでビビりが出てんだよな、俺」

「……でも、このままじゃ…その成宮って奴…怪しくない?…明らか、好意持ってるから、わざわざ学校まで来たんじゃねぇの?」


晴が腕組みをしながら話す。


「……俺、成宮って奴に優花ちゃん渡す為に諦めたんじゃねぇんだけど」


そう腕組みをして、キリッと見る晴に、俺は更に縮こまる。


「……ユキ、落ち込んでんだから喧嘩売ってどうすんだよ、晴」


持田は苦笑いをしながらそう言う。


「……合宿中に、どうにかするよ」


周りがじれったく思う以上に、俺だって今のこの状況がじれったい。


そんなことずっと感じてた。


それでも、これ以上優花と距離が空いてしまうことが怖くて動けなかった。



だけど、もういい加減……

この距離感が鬱陶しい。


あの時感じた、優花の匂いや鼓動をまた感じたいのなら、俺から動くしかない。


何もしない後悔より、
何かしてからの後悔のほうがいいのかもしれない。


落ち込んでる俺に、ちっとも慰めてもくれず、アドバイスだってくれない晴にケツを叩かれた気がした。



晴と持田に話をして、少し気持ちが前へと進んだのに……


リゾート気分で訪れた合宿が、あんなにも波乱になるなんて思ってもみなかった。






「はぁ〜!やっと着いた〜!誰かさんがため息ばっか吐くから息苦しかったんだよな〜……っいて!」


バスを降りた途端、そんなこと言う風馬の頭を小突く。


「もう、うるせーなぁ。どうにかするって言ってんだろ」


重たい荷物を抱え、あーだこーだと言いながら、ロッジへと向かう。



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