俺の妹が可愛すぎて。
* * *
「……優花、ちょっといい?」
夕食後に花火をしようとみんなは慌ただしく片付けをする。
そんな最中、あたしは風馬に呼び出された。
呼ばれた理由はなんとなくわかっている。
薄暗くなった浜辺を歩きながら、風馬が口を開く。
「……松丘先輩から訊いたんだけど……マジなの?」
……やっぱり。
「……成宮くんとのこと?……ほんとだよ」
「……何考えてんだよ、バッカじゃねぇの?……あいつ、転校する前に優花につきまとってた奴じゃん。……よりによって、なんであいつなわけ?」
風馬も松丘くんと一緒で、半ば呆れ顔で話す。
「……成宮くんはちゃんとあたしに気持ちを伝えてくれた……それに応えようと思っ「利用してんじゃねぇよ、バカ」
あたしの話を遮り、風馬がいつになく真剣に言った。
怒っているようにも聞こえた。
「……成宮、利用してんだろ?……ユキのこと、忘れようとして」
睨みつけ、そう言う風馬に目が合わせられなくなり、あたしは唇を噛みしめる。
「……どうして、みんなユキちゃん、ユキちゃんって言うの?……ユキちゃんは『お兄ちゃん』じゃない」
「……なんでか教えてやろうか?みんながユキ、ユキ言う理由」
「………」
「……血なんか繋がってねぇからだよ」
「でも、戸籍上は…」と言いかけたあたしに、風馬がため息をつく。
「……超疲れる。紙切れ一枚のことであーだこーだ言いやがって…。だから、なんなわけ?……血繋がってないんだから、好きになってもおかしくないじゃん。……なんで無理に忘れようとしてんの?……ってか優花、ユキに嫌われようとしてね?」
あたしの考えが風馬に見透かされ、何も言えなくなった。
たとえ、紙切れ一枚の問題としても、あたしにとってはそれが何よりも重い真実。
簡単に破けるものなら、破きたい。
その真実だけ、捨ててしまいたい。
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