俺の妹が可愛すぎて。


地面を蹴りながら歩いてくるその姿は、なんだか怒っているかのようにも見えた。


「おー風馬ー。なにしてたんだよ。優花ちゃん、知らねぇ?」


晴が風馬にそう声をかけると、俯いていた風馬は不機嫌そうに顔を上げる。


「……超ムカつく、なんなのアイツ。すっげぇキレそー…」


そう吐き捨てるように言うと、風馬は俺の隣にドスンと腰を下ろす。

ズボンのポッケに手を突っ込んだまま、声に出るほどの深いため息をしながら貧乏ゆすりまでしだす。


「……なんだよ、ケンカでもしたのか?優花は?」


いつになくイライラMAXの風馬の感じに、晴も持田も若干ビビってるから俺が訊く。

人のこと言えないけど、元々口が悪い風馬は機嫌が悪くなると、口も態度も悪くなる。


「……泣かしてきた」


イライラしすぎて、風馬の激しい貧乏ゆすりがベンチに響く。


「は?泣かす?優花を?お前、何言ったの?」


すると、そばに透子がいるのに気づいた風馬はなんだか濁すように話す。


「……別に。……注意してやっただけ。アイツ、意外にわがままだから全然きかねぇけど。……もう、知らねぇ俺」


多分、風馬はあのことを問いただしたんだろうなと思った。

……誰に訊いたんだろうとチラッと晴を見ると、晴は顔の前で手を合わせて口パクで「ごめん」と言った。


……お前か。このしゃべり。



「……優花、浜辺にいんの?」


組んだ足に肘をついてあごを乗せてる風馬にそう訊くと、「あぁ」と不機嫌な返事が返ってきた。


「……ちょっと、俺行ってくるわ」

「へ?マジ?!大丈夫か?」


立ち上がった俺に晴がビックリしたように声をかける。


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