俺の妹が可愛すぎて。


「……一人で浜辺いて、変な奴に絡まれてたら危ないし。行ってくる」


晴にそう返事をして、歩き出すと透子が心配そうに俺を止める。


「待って、ユキ。あたしも行く」


そう言って、俺の腕に触れた透子の手をそっと離す。


「……ごめん。俺、一人で行かせて」


そう少し笑って謝ったのに、透子は表情を変えなかった。





『……泣かしてきた』


風馬に成宮のことを問いただされたって、自分が成宮と付き合うことを決めたのに、何を泣くことがあるんだろう。


泣き虫な優花だけどよっぽど風馬にキツく言われたのだろうか。


悶々とそんなことを考えながら浜辺に行くと、案の定誰か知らない男二人組に話しかけられている優花を見つけた。


近づいていくと、「こんなとこで一人で何してんの?どうしたのー?泣いてるの?俺らが慰めてあげるから、こっちおいでよー」と男二人が話しているのが聞こえてきた。


きっも。

どっか行けよ、ボケ。


風馬の口の悪さが移った。

俺もイライラしてんのかも。


背後から近寄って、男の一人が優花の手を握ったところに俺が割り込んで、その汚い手を振り払った。


「……何してんだよ、これ、俺のなんだけど。他、あたってくれる?」


そう眼を飛ばすと、男二人はそそくさと逃げて行った。


逃げて行った男二人が遠くに行ったのを確認して、優花を見ると優花は握られた手を握りしめて俯いていた。


「……大丈夫か?」


そう言いながら、優花の手に少し触れようとすると優花はそれを避けるように身体を背けた。



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