俺の妹が可愛すぎて。


人で溢れかえる神社を抜け、歩道に出る。

少し小走りになりながら、優花たちがいる花壇へ向かった。


っていうか……俺がついたら風馬は麻依ちゃんを送りに行くだろうから、俺と優花だけになるんだよな…

……普通に喋れっかなー……。


また気まずくなるかもしれないという不安と、

どんな理由であろうと優花に近づける若干の嬉しさとで、気持ちのバランスがおかしい。


「あ、来た来た」


約束された場所に近づくと、かなり前の辺りで風馬が待っていた。

後ろの方では、花壇のところで優花と麻依ちゃんが座って話をしていた。


「わっ、浴衣来てんじゃん。もしかして、実里さんに着せられたの?」

「……お前が嫌がるから、俺にきたんじゃん」


そう薄目で風馬を睨むと、風馬は相変わらず小悪魔的な笑顔で笑う。


「……ふ〜ん、まぁいいじゃん。優花も浴衣だし、いいムードになるかもよ?」

「……何がいいムードだよ。もう、関係ねぇし…」


いいムードになんてなったら、マジで困る。


優花には一応成宮って彼氏がいるんだし、俺にも透子って彼女がいる。


そもそも、俺ん中ではもう諦めなければならないし、本来の『兄妹』として関係を築いていかなければならない。


……でも、気持ちは到底、言うことは訊かない。



「あ、お兄さん!わぁ!浴衣、着てる〜♪かっこいい〜♪」


風馬と二人のもとへ近寄ると、一番にそう声をかけてくれたのは麻依ちゃんだった。


かっこいいと言われ、ドヤ顔で風馬を見ると風馬は明らか拗ねた顔をして見せた。

多分、麻依ちゃんが俺をかっこいいと言ったから。超、わかりやすい奴。


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