俺の妹が可愛すぎて。


「それでとりあえずは歩けんだろ?」

「わぁ…ユキちゃん、スゴイ…」

「……母さんに浴衣無理やり着せられてるときに、豆知識だって教えてもらったんだよ。……たまには母さんの言うこと、役に立ったな」


応急処置した下駄を履いてみせた優花は、俺に微笑んだ。


「……あ……」

「……ん?」


心ん中で思ったことに、思わず声が出てしまい、優花がキョトンと俺を見る。


「……いや…なんか、優花が笑ったの久々に見たかもって思って」

「……あたしも……ユキちゃんが笑ったの…久しぶりに見た」


そう言って、笑い合うとグ〜という低い音が優花のお腹辺りから聞こえてきた。


俺がその音にクスクス笑うと、優花は顔を真っ赤にしていた。


「なんだよ、腹減ってんの?…何にも食わなかったのか?」

「……だって……浴衣って苦しくて食べると余計苦しくなりそうだから……」


そう言いながら、優花は浴衣の帯を撫でる。


「……緩めたら?やってやろうか?」


そう言いながら、優花の帯に触ると「大丈夫だよ、ユキちゃんのエッチ」と言われてしまった。

それでもまだ顔が赤くなっている優花が面白くて笑ってしまう。



「晴たちと合流して、なんか食おっか」


晴か透子に電話をしようと思った時、袖から携帯の着信音が聞こえた。


携帯を取り出すと、画面には晴からの着信が表示されていた。


「もしもし?晴?」

『おーユキ。どう?優花ちゃん、大丈夫?』

「うん、大丈夫。…晴たち、今どこ?合流しねぇ?」


そう晴と話しながら、隣の優花を見ると応急処置した下駄が嬉しかったのか、足を小さくパタパタ上下に動かして、下駄を見て微笑んでいた。

それを見て、俺まで口元が緩みそうになる。


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