俺の妹が可愛すぎて。


『あ〜…透子、帰るっていうから送るわ。ユキは優花ちゃんと祭りに楽しんだら?またもう少し時間あるし』

「は?マジ?」


少し声が大きくなってしまった俺の声に、優花がビックリして俺を見る。


『……大丈夫だって。ちゃんと送っとくから。……ユキは気にすんな』


晴のなんだか真面目で優しい声に、不安がよぎる。

俺は優花から少し離れて、小声で晴に伝える。


「……わりぃ。俺が優花んとこ行ったから……透子、怒ってる?」


そう訊くと、晴も少し場所を変えたようでしばらくしてから返事が返ってきた。


『…いや……怒ってるっつーか……ポーカーフェイスだからわかんねぇんだよな……なんか暗い感じはするけど……まぁ元々こんなんじゃねぇ?』

「………」

『……それよりさ、ユキ。…やっぱ……こういうのって変じゃない?……ユキ、ちゃんと透子と話したほうがいいよ。…ユキだって、こんな関係…おかしいって思ってんだろ…?』


優花のことが好きなのに、透子と付き合う……

それはもう初めから思っていた。


あの時の俺はかなり精神的に参っていて、ってそんなの言い出したらすっげぇ言い訳だけど。

透子が『忘れさせてあげる』と言った言葉にすがりたかったんだ。


本当に優花を忘れたい……

優花って奴、誰だっけ?って記憶が全部飛んでいけばいいのにってくらい……


あの時の俺は優花を忘れたくて仕方なかった。


だから……


透子にすがってしまった。


時間が経って少しづつわかる。


こんな関係……

透子を傷つけるだけだって。



『……優花ちゃんのこと……好きなんだろ?』

「…………うん……」

『……だったら、やっぱりちゃんと話せよ。……大丈夫だよ、透子ならちゃんとわかってくれる』

「……うん。……そうする」

『まぁ、今日は俺がちゃんと送るから、ユキは優花ちゃんと楽しんでこいよ』

「うん……サンキュ、晴」


そう言って、電話を切った。


大きく深呼吸をして、優花のもとへ戻った。


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