俺の妹が可愛すぎて。


「……ったく、だから注意したのに。……あんな奴…「……別れてきたの…」


ため息混じりの風馬の言葉を遮った。


ユキちゃんと風馬がほぼ同時にあたしを見るから、気まずくなって俯いた。


「……別れてきたの。……別れ話……してきたの……それで、遅くなっちゃった……」


なんだか重たい空気が嫌で笑おうとしたのに、うまくいかなかった。


「……なにそれ…優花から言ったの?」


呆れた感じに苦笑いした風馬があたしに訊く。

黙ったままコクンと頷いた。


あたしの気持ちを知ってる風馬は、ユキちゃんがいるからか、それ以上なにも訊かなかったし、ユキちゃんも黙ったままだった。


時計の針の音がはっきり聞こえるくらい、静かだった。


しばらくして、風馬がポツリ呟く。



「……じゃあ……誰が優花つけてんの?」

「………」

「………」

「……ま、まさか……おばけっ?!!」


そう言うと風馬は自分の身体を自分の腕で抱きしめて「きゃあ!」と悲鳴をあげる。


「……もう、やめてよ、変なこと言うの…」


なんだかあたしまで怖くなってきて、鳥肌が立つ腕をさする。


「……やっべ。俺まで鳥肌立ってきた…。へんな事言うなよ、バカ」


ずっと黙ったままだったユキちゃんは、そう言うと風馬の頭をペシッと叩く。


「……っいて!…だって……じゃあ、誰なんだよ」

「………とりあえず、塩まいとくか?」



そうユキちゃんが提案して、キッチンから袋ごと塩を持ってきた。


「……風馬、わりぃ。これ、玄関とこ置いてきて」


ユキちゃんが風馬に渡したのは、盛り塩。


「え〜……玄関、俺一人で行くの怖いって〜」

「うるせぇ。先にビビらせたの、お前だろーが」


そう言ってユキちゃんは無理やり、風馬に玄関へ行くように促した。










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