俺の妹が可愛すぎて。


家までの帰り道、ユキちゃんはあたしの手を握ったまま、何も話さなかった。


だから、あたしも何も訊けなかった。


ただ、繋いだ手から感じるユキちゃんの温もりに心の中で必死に問いかけていた。


家の前まで来ると、ユキちゃんはあたしに向かい合うように立つ。


その表情はやっぱり悲しそうに微笑んで、

「……母さんたちには黙っててな」


そう言って家の中に入って、「ただいま〜!」って元気よく言うユキちゃんの背中をあたしはただ見つめることしか出来ない。


「……あ、ケーゴさんおかえり〜。出張、どうだった?お土産は〜?」


リビングで実里ママやパパや風馬と話す、ユキちゃんはとても笑顔だった。


だけど、あの表情が忘れられないあたしは、ユキちゃんは無理してるんだって感じて、悲しくなる。



ねぇ……ユキちゃん…。


何があったの……?


ユキちゃんのパパと……

どんな話をしていたの……?



ユキちゃんのパパは……


何しにユキちゃんに会いに来たのー?









* * *



ユキちゃんのパパが来たあの日から、ユキちゃんはいつもと変わらない。


だけど……

時々、急にさみしそうな表情になったり、話をしていても上の空になっていることがあった。


たまに心配になって、訊いたりするけど、ユキちゃんは「何にもねぇよ」って笑って誤魔化す。


その笑顔がまた不安にさせるんだ。


ユキちゃんは何かを悩んでいる。


実里ママにもパパにも風馬にも、そしてあたしにも……

ユキちゃんは誰にも言わずに何かを一人で悩んでいる。


その距離がもどかしくてたまらないのに、ユキちゃんがそんな風に笑うから、あたしは何も訊けなくなる。


だったら……


あたしから動くしかないんだ。



< 241 / 315 >

この作品をシェア

pagetop