俺の妹が可愛すぎて。
「……ここ……だよね…」
ユキちゃんのパパからもらった名刺を片手に、高層ビルの前に表示された看板を確認する。
『株式会社 リバナエージェンシー』
表記された会社名と名刺を確認して、あたしは中に入った。
……制服なんかで、来ないほうがよかったかな……
会社の社員さん達が制服姿のあたしを不思議そうに見ている視線が集まる。
入口のすぐ前にある、受付の女性社員に声をかけた。
「……あの……お忙しいところ申し訳ないのですが……那津川 渉さんはいらっしゃいますか?」
「……え〜……那津川にはどのようなご用件でしょうか?……あと…お名前は…?」
少し迷ってから応えた。
「……栗原 優花と言います。……親戚のものです。……名前を言っていただいたら、わかると思います」
そう言うと、女性社員の人は「少々お待ちください」と手元の電話で内線をかけているようだった。
ユキちゃんのパパを待っている間、緊張からか不安からか胸がドキドキしていた。
ユキちゃんは「何にもねぇよ」って笑うけど、でもあの表情が忘れられなくて…真実を知りたくて、ここに来てしまった。
ユキちゃんにも、誰にも言わなくてここに来てしまったことに、少し不安もあった。
だけど……
誰にも相談出来ないくらい、ユキちゃんが何かを悩んでいるとしたら……
助けてあげたいって思ったんだ。
いつも、あたしを助けて、笑顔にさせてくれるユキちゃんを……
今度はあたしが助けてあげたいの…。
あたしが……
ユキちゃんを笑顔にしたい……。
しばらくして、エレベーターホールからユキちゃんのパパが降りて来た。
まさかユキちゃんじゃなく、あたし一人がここに来るなんて思ってなかったんだろう。
ユキちゃんのパパはビックリしているように見えた。
あたしはペコッと頭を下げた。
「……優花ちゃんだよね?…どうしたんだい?こんなところまで来て…」
「………お話…したいことがあって……ユキちゃんのことです……」
そう言うと、ユキちゃんのパパの表情が強張った。
「……とりあえず、こんなところじゃあれだから……応接室へ」
そう言って歩き出したユキちゃんのパパのあとをついて行った。
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