俺の妹が可愛すぎて。
「……どうぞ、座って」
「……失礼します」
応接室に通され、こげ茶のソファに腰を下ろす。
壁には高そうな絵が飾られ、棚には壺まで置かれていた。
「………それで?……話って?」
テーブルを挟んだソファに腰掛けているユキちゃんのパパが優しく微笑む。
『何にもねぇよ』って笑うユキちゃんみたいに、少しだけさみしそうに……。
「……あの……あの日から……那津川さんが来たあの日から…ユキちゃんの様子が変なんです……」
「……変?」
「……はい。……笑ってたと思ったら急に深刻そうな表情したり、上の空だったり……今まで、そんなユキちゃん見たことなくて……。
……那津川さんとあの喫茶店で話してからなんです…。
………那津川さんは……ユキちゃんと…どんな話をされたんですか?」
膝の上に置いた鞄の取手をギュッと握りしめて、ユキちゃんのパパを真っ直ぐ見た。
「………ユキからは何も訊いてないんだね?」
「……はい。……訊きたかったけど……ユキちゃんのあんな表情見てしまったら……なんか訊けなくて……」
鞄の取手を握っていた手に視線を落とす。
また思い出すユキちゃんの表情に、胸が締め付けられていく。
「……ユキのこと……心配してくれてるんだね」
ユキちゃんみたいに笑うから、なんだか切なくなる。
「……はい……。……ユキちゃんは……あたしにとって……大切な人なんです」
真っ直ぐ見つめてそう言うと、ユキちゃんのパパは優しく微笑んだ。
「……そうか。ユキは……幸せなんだな……こうやって…大切だと思ってくれる人に囲まれて……。……だとしたら、私は…ユキに酷なことを言ってしまったのかな……」
そう言って、ユキちゃんのパパは悲しそうに笑うと、握りしめていた両手に視線を落とした。
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