俺の妹が可愛すぎて。


『……あの頃、父さんは会社設立の為に、国内だけじゃなく、海外にも出張に行っていて、家に帰るのは荷物を取りに行くか寝に帰るくらいだった。

……家をまだ幼いお前と母さんだけにするのは、本当に申し訳なかったと思っている。

そんな生活を続けてると、もちろん母さんだっていい気分じゃない。
家に帰れば喧嘩、電話でも喧嘩してしまうことが続いた。

それでも父さんは仕事を変えるつもりなんてなかった。
自分の会社を持つことは昔からの夢だったし、母さんやユキに満足のいく生活をさせる為に夢中だった。


だけど、そんな中…母さんは探偵を使って父さんを調べていたんだ。
外でどんな行動をしているのか……。

その時、父さんには信頼できる部下がいた。

仕事の出来る、頭の賢い部下だ。
……女性だった。

もちろん、父さんにはいかがわしい感情なんてなかった。
あくまで、仕事上のことしか彼女とは関わってないし、彼女だってそうだった。


だけど、信頼できる部下なだけに共に行動することが多かった。


出張して、地方に泊まることもあったけど、もちろん部屋は別々だし、彼女とはまったく何もなかったんだ。


でも、母さんが探偵を使って調べられた書類や写真にはその彼女とのことがたくさん書かれていたよ。

写真も……

ホテルや旅館に一緒に入るところが撮られていた。


……母さんに一生懸命説明しても……
何もない、仕事上の付き合いだと言っても……母さんは……実里は……信じてくれなかった……』



テーブルの上に置いた自分の両手をギュッと握りしめて、視線を落とす父さんの表情から、俺は目が離せなかった。




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