俺の妹が可愛すぎて。


「……透子、ごめん……」

「……ユキ…?」

「……ごめん。……自分勝手なのはわかってんだけど……透子とは……出来ない」


部屋の中を埋め尽くした沈黙が、耳が痛くなるほど響いてた。


透子の言うとおり、恋人関係になれば当たり前の行為が、透子とは出来ないでいた。


キスも……それ以上も。


理由はわかり過ぎている。


いつも……優花が浮かぶからだ。



「………まだ……栗原さんのことが好きなの…?」


か細い声で訊く透子の言葉に、俯いたまま頷いた。


「………ユキだってわかってるじゃない。栗原さんは『妹』だって。

だから、忘れる為にあたしと付き合ってるんでしょ?

あたしはそれでも構わない……ユキが栗原さんを忘れるまで待つ。

……あたしを栗原さんだと思って、キスもエッチだってすればいい……

……あたしを利用してよ…!」


すがるように俺の腕を掴んだ透子の手を握って、俺は首を横に振った。


「……そんなの、出来るわけねぇじゃん…。……そんなことしたって……透子を余計傷つけるだけじゃん…」

「………構わない……ユキの為なら……あたしはなんだってする…」



誰かの為に、何かを犠牲にするとしたら……


俺は………


優花の為に……何を犠牲にする……?






「……透子……俺ら……別れよ…?」





そう言った瞬間、透子の頬に涙が伝っていった。





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