俺の妹が可愛すぎて。


「………ごめん…」


一度、透子の顔を見たらもう見れなかった。


初めから……透子を傷つけるだけだってわかっていたのに…。


立ち上がって部屋を出て行った俺の背中越しに透子が声だけ追いかける。



「……あたし……絶対、ユキと別れないから……っ!」



バタンと閉めた玄関のドアに背をもたれかけさせ、俯いた。


透子を責めたくない。


自分が悪い……。


優花が好きで…
諦めきれなくて……

どうしようもなくて…

透子にすがった俺が悪い……。


でも、もう戻れないんだ…。


優花を諦めきれないことも、

透子を傷つけるだけだってことも、


自分の気持ちだってわかりすぎるくらい、わかってたのに……



「………俺……マジ、さいてー……」



俺は……


何を犠牲にしたらいいんだろうー。








* * *



「……ユキ、優花になんかしたの?」

「は?何もしてねぇし」


今日の晩ご飯担当は俺だった。

何も作る気なんか起きなかったのに、風馬が腹減った腹減ったうるさいから、渋々カレーを作った。

カレー作っとけば、帰りの遅いケーゴさんも母さんも、あっためるだけで済むし。


晩ご飯が出来ても、優花が部屋から降りてこない…風馬の話だと学校から帰ってきてからずっと部屋にこもりっきりだと言う。

それを見て風馬が俺のせいだと、カレーを口いっぱいに頬張りながら俺に質問攻めする。


「絶対、ユキのせいだって。……優花が落ち込むときなんて、大抵ユキがらみなんだから」

「……何を根拠に言ってんだよ。…マジで何にもしてねぇんだけど……こっちが訊きたいくらいだよ」

「……じゃあ、訊きにいってきたら?」


リスみたいに両頬にカレーを頬張った風馬がニンマリ笑うから、俺は苦笑いしか出来なかった。







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