俺の妹が可愛すぎて。


「………この前……『…別れよ』って言われたんだよね……。…ユキから何も訊いてないの?」


は?マジ?


ついに言ったのか、アイツ……。


「……マジ?……訊いてなかった…」


なかなか言わねぇななんて思ってたのに、いつの間に言ってたんだ。


……ってことは、優花ちゃんに告ったのかな……?


そう思いながら優花ちゃんをチラッと見た俺に、透子が感づく。



「……まだ栗原さんには言ってないと思うよ、自分の気持ち…。……あたしが……わがまま言ったから…」

「……わがまま…?……ってか……透子……ユキの気持ち……知ってて…」


そう言うと、透子は苦笑いする。


「……知ってるわよ、初めから。……それでも、よかったの……。……利用してって言ったけど……ユキは、そんなこと出来ないって……」

「…………」

「………もう……別れよって……」


そう切なそうに呟いた透子の横顔に目が離せなかった。


……こんな表情…するんだって思った。



「……ムカついたから、絶対別れないなんて言っちゃった……。

……もう……無理ってわかってるのに」



悲しいくせに無理に笑う透子がやけに女っぽく見えて、俺は制服のポケットからハンカチを出してそれを渡した。

しわくちゃのハンカチを渡され、キョトンとしてる透子。



「……笑うか泣くかどっちかにしろよ」



ハンカチを受け取った透子がふふっと笑う。


「……な、なんだよ」

「……汚いハンカチ……しわくちゃ」


そのしわくちゃのハンカチを笑って眺めている透子に、少しだけ安心した。




誰かを傷つけなければ、気づかない思いだってあるし…

何かを犠牲にしなければ、手に入らないものだってある。



……あと、ユキに残されてるのは…


自分の気持ちに正直になること。




「……ねぇ、晴?」

「……ん…?」


もう涙の乾いた透子の表情は、今までで一番……いい顔をしてる気がした。



「……協力してほしいの。

………ユキの為に……」





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