俺の妹が可愛すぎて。


顔を背けたまま何にも返事をしない俺に、優花は回り込んでベッド脇にしゃがみ込むと、小さな保冷剤を俺のほっぺにそっと押し当てた。


優花の顔はやっぱり泣きそうになってたけど、イライラMAXの俺は優花の涙なんかに気持ちは揺るがない。


押し当てられていた保冷剤をバッと払いのけて、上半身だけ起こした俺に優花はびっくりする。


「……優花だってキレろよ!なんでずっと黙ってるわけ?……こっちの気持ちも知らないで、ずっと黙ってんだぜ、あいつら…」


そう言うと優花の目から涙がポロポロ溢れて零れていく。


それでも、俺は揺るぎなんかしない。



「……泣いてもダメ。……なんか言えよ。……優花は何とも思わねぇの?」


キリッと優花を見つめると、優花は涙を流しながら可愛いこと言い出すから、ズルいと思った。


「……あたし……嬉しいの……っ…」

「……何が?」

「………っ……ユキ…ちゃんと…っ…『兄妹』じゃ…ないから…っ……ユキ…ちゃんと……ずっとっ……一緒にっ…っ…いられる…っから……っ…すっごく……嬉しいっ……の…っ…」



ポロポロ溢れる涙を拭いながら、そう言う優花が可愛くて愛しくてたまんない。



怒ってた今、優花の涙なんかに惑わされないと思っていたのに、

俺とずっと一緒にいられることに、涙を流す優花にイライラしていた気持ちは溶かされていく。


あー…俺ってやっぱ優花のことになると超弱いって思った。



泣いている優花を抱き寄せると、優花が胸の中で俺に訊く。


「……ユキちゃんは…っ……嬉しくない……?」


くぐもった優花の愛しい声。


優花の優しい匂い。


優花の心地いい体温。


優花の柔らかい長い髪。



全部が愛しくて、

その全部が気持ちは穏やかにしていくから、

単純すぎる俺の感情にちょっと嫌気がさす反面……嬉しかった。



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