俺の妹が可愛すぎて。
「……初めからあなたは家族より仕事だった。……もちろん、あたしたちの為に頑張ってるあなたを応援したかった…ううん、心から応援してたわ。……ユキが産まれる時だって、あなたは病院に来てくれなかった。それは仕事があるし、仕方ないって思ってた。
でも、お宮参りでも誕生日でも記念日でも、クリスマスでもお正月でも、ユキの幼稚園の入園式でも、ユキが高熱を出したときでも……
あなたはいつでも仕事を理由にして、来なかった。……来なかっただけじゃない…。……メールも電話もくれなかった」
父さんは黙って俯いたままだった。
「……仕事が悪いなんて言ってない。……でも……家族のそっちのけにして、家族の顔もまともに見ようとしない、訊こうとしないあなたを、ユキに父親はこういう人だって見て育ってほしくなかったの。
……父親のいない家庭はユキにとってどうなのか、あたしのわがままなんじゃないかって何度も迷ったわ。
………何度も泣いたわ」
そう言った母さんは下を俯いて、冷めたコーヒーのカップを握りしめた。
「……あのままじゃ……あたしがユキに笑ってあげられないって思ったの。
……ユキ、嫌な思いしないでね?」
そう言うと、母さんは俺に優しく微笑みかけるから俺は黙ったまま頷いた。
「………ユキの為だったの…離婚したのは。……ユキは……もちろん、あなたの子どもでもあるわ。
……でも…あなたがああやって、家族を見ようとしない、笑顔にさせてくれないから……
……あたしがユキを笑わせてあげたかったの」
そう言った母さんの頬には涙が一筋流れてた。
それを見て、俺まで涙が出そうになった。
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