俺の妹が可愛すぎて。


「……いいもん。女は40歳からなのよ。……優花ちゃんなんてまだまだ子どもなんだから」



確かに父さんが言った通り、最近…というよりケーゴさんと出会ってからの母さんはいい顔してると思う。

元々、笑顔いっぱいで元気な母さんだけど、前よりも若々しくなったというか綺麗になったと思う。


……女が恋したら綺麗になるっていうのは、本当なんだなって思った。

調子乗るから母さんには絶対、言わないけど。


「……なんだよ。優花にヤキモチやいてんの?」


そう笑うと、母さんは拗ねる。


「…そりゃ妬くわよー。あたしの大事な大事な一人息子なんだもん。……あぁ〜ぁ…ユキもそうやってだんだん大人になっていくんだなぁ…」


悲しそうに、でも少し嬉しそうに母さんが呟く。


「……なにそれ(笑)俺と優花がそうなったらいいと思って籍入れてなかったのはそっちじゃん。……まぁ俺としては、そっちの方が良かったけど」

「……う〜ん…籍入れなかった理由は実はそれだけじゃないのよ?」


まだ隠し事があるのかと眉間にシワを寄せると、母さんは違う、違う!と焦って手を振る。


「……そんなに深い理由はないの。…ケーゴが言ってたでしょ?『籍を入れるだけが全てじゃない』って。

……ケーゴもあたしも付き合いだして、お互いずっと一緒にいたいと思った。

だけど、もう二人とも一度この人だと思った人と結婚してる。


あたしとケーゴじゃ、相手を失った理由は違うけど……結婚っていうのは人生でたった一人…って思っちゃったのよね。


……二人とも、頭固いでしょ?」


そう言って母さんは笑ってたけど、俺は黙って話を訊いていた。


「……もちろん、世界中には何度も再婚してる人もいるし、それが間違いだなんて全然思わない。

けど、あたしとケーゴは……離婚はしたけど過去の人のこと、忘れたりしないで大切にしておきたかったの。

……だから、籍は入れなかったの。


まぁ、その理由が六割。ユキと優花ちゃんが恋人になったらいいなっていうのが四割ってとこかな」


母さんの言葉に「ふ〜ん…」ってつまらなさそうに呟くと、訊いてんのか?!って母さんが身体でアタックしてくるから、笑ってそれを交わす。




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