俺の妹が可愛すぎて。
でも、風馬は振り返らず「いい。一人で行く。」とそれだけ呟いて、早々に家を出て行った。
愛想ねぇ奴……。
家から駅まではすぐ近くで、
駅から学校も二駅のところで、以前より登下校がかなり楽になった。
それでもやっぱり通勤ラッシュは避けられなくて、たった二駅だけど今もこうして満員電車に揺られる。
「……優花、こっち。」
満員電車の中、優花の後ろにいたおっさんが鼻息が荒くて妙に優花に近寄るから、俺は優花を扉側に移動させ、そのおっさんからかばうように立った。
その代わり、俺の肩におっさんの暑苦しい鼻息がかかるが、優花のためなら、仕方ない。
移動させる時に握りしめた手を、いつ離していいかわかんなくて、結局握ったままその場を過ごしていた。
「……ユキちゃん、身長何センチ?」
手のことは何も触れず、向かい合う形の俺と優花。
優花は俺を見上げて、そう訊いた。
「え〜と……178センチくらいかな?優花は?」
「う〜ん…158センチくらいかな?」
「ふ〜ん…チビだな(笑)」
そう言って子供扱いして、優花の頭をポンポン撫でた。
すると、優花は「もう、チビじゃないもん。」と拗ねる。
俺の右手に繋がれたままの優花の手。
しかも、こんな近距離で初めて優花の頭を撫でちゃった…
なんか恋人みたい……。
こんなとこ晴や持田に見られたら、また冷やかされるんだろうな。
今日学校に着いたら、まず優花のことについて男どもから詮索されるんだろう。
そして、晴にしつこく『俺と優花ちゃんが仲良くなれるように、お兄ちゃんよろしくっ!』とかなんとか言われるんだろう。
もう晴の言動が容易に想像できるから、笑うのを通り越して、溜息が出る。
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