俺の妹が可愛すぎて。


学校の最寄り駅に着き、満員電車からようやく解放され、ホームに降りた。

降りたと同時に、どちらからともなく繋いでいた手をそっと離した。

この駅に降りるのは、ほとんどが学生。

そのせいか、


「ユキっ!!」


いともたやすく、俺を見つけた晴の声が、ホームに響いた。


声の方を振り返ると、二車両前のところに、晴が俺に大きく手を振りながら走ってくるのが見えた。

隣には、透子もいた。

透子は、晴が大声でアクションが大きいせいか、少し迷惑そうな顔をしていた。


「おはよ。一緒の電車だったんだな。」

「みたいだな〜……、……?!」


晴はそう言いかけて、俺の隣にいる優花を見て、言葉を失っているご様子。


「……ユキ、おはよ。…?

……あ、この子が、前話してた子?」


さっきのおっさんみたいに、鼻息が荒くなりかけている晴を無視して、隣にいた透子が落ち着いた口調でそう話す。


「あ、うん。一応…俺の『妹』の栗原 優花。」


そう優花を紹介すると、優花は「よろしくお願いします」と軽く頭を下げた。


「ちょっと来い!ユキ!」

「へっ?!」


そう言った晴に、俺は腕を力強く掴まれて、ホームの端に連行された。


「なに、あの天使っ!!」


本人は小声のつもりだろうが、興奮している為、ちっとも小声になっていない。

朝からの晴の興奮声に、俺は片耳を塞いだ。


「は?だから、俺の『妹』だって言ってんじゃん。」

「どうでもいいし、そんなこと!可愛すぎだろっ??!」

「きったねぇな、お前。」


晴の唾が俺の制服のブレザーの袖にかかり、それを一生懸命拭く。

朝からとんだ災難だ。


「あ、あの!俺、ユキの幼なじみの松丘 晴って言います!ユキと同じサッカー部で、好きな食べ物はカレーライスとメロンパンです!嫌いな食べ物はキュウリ。座右の銘は『為せば成る!』です!よろしくっ!!」


俺から急に離れたかと思うと、晴は後ろで俺らを待っていた優花に、マシンガン級の自己紹介をしていた。








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