俺の妹が可愛すぎて。


「なんて?」

「『行かない』って。」


優花は寂しそうに呟いたけど、俺は「じゃあまた今度誘ってみよ。」って笑顔で返した。


風馬のそれら一つ一つの言動が、深い意味なんてないって……

その時の俺も、もちろん優花も思っていたと思う。






部活動が始まると、優花が見ているせいか、晴はスキップパスや、線路ドリブルなどの練習メニューをいつも以上に張り切ってこなしていく。


「なんなの、あの張り切りよう…。いっつもあんなんじゃないじゃん。」


柔軟をしている俺と持田。

持田が呆れ顔でそう呟く。


「……優花が見てるからじゃね?いてて…。」


持田に背中を押してもらい、前屈をする。

スポーツはサッカーだけじゃなくて、万能な方なのに、なぜか身体が硬いのが悩みだった。


「……だろうな、わかりやすい奴。晴に紹介してほしいって言われたんだろ?優花ちゃんを。」

「……うん。」

「はは(笑)お前もわかりやすいな。面白くないんだろ?」

「……何が?」

「何がって、晴に優花ちゃんを紹介すること。……面白くな〜いって顔してる。」


確かに…面白くない。


晴は別にいい奴なのに、

晴と話してて笑ってる優花とか、

一緒のクラスになったって時に手まで握って喜んでたあの行為とか……


……あんまり、いい気分じゃなかった。



「……ユキ、惚れてんじゃん?優花ちゃんに。」

「………惚れてないよ。……『妹』じゃん。」

「……でも。『血は繋がってない』よ?」



『血は繋がってない』


確かにそうだ。

でも、戸籍上では俺は優花の兄ちゃんにあたる。


いくら顔が似てなくたって、

いくら小さい時の優花のことなんて一つも知らなくたって、



世界中の奴らから見たら、

俺と優花は、ーーー『兄妹』だ。



< 51 / 315 >

この作品をシェア

pagetop