俺の妹が可愛すぎて。


「……そういえば、風馬くん、下りてこないわね。」


母さんが風馬に「ご飯だよ。」と言いに行ってからもう10分ほど経っていた。

風馬はまだ部屋から下りてこない。


「あたし、呼んでくるね。」


優花はそう言うとパタパタと二階へ上がっていく。

優花が階段を上がっていく様子を見ながら、母さんがポツリ呟いた。


「……母さん、風馬くんに嫌われてるのかな。」


寂しそうに肉じゃがのジャガイモをつまむ。


「……人見知りなだけじゃねぇの?食事会の時だって、顔緊張してる感じだったし。」

「……そうだといいけど。」


俯きがちにそう呟く母さんは、なんだか母さんらしくない。


パタパタと走るスリッパの音がして、優花が戻ってくる。


「……ご飯、いらないって。」

「え、食ってないんだろ?」

「うん……お腹すいてないからいいって言うの。」


優花が席に座ったのとは反対に、俺は立ち上がった。


「…?…ユキちゃん?」

「俺が言ってくるわ。」


そう言って二階への階段を上がっていく。


こういう距離感が俺はキライだった。


会話らしい会話をしないとか、

目も合わそうとしないとか……。


さっき俺が母さんに言ったように、ただの人見知りかもしれない。


でもいつまでもこんな距離感じゃ、何もわからないままだと思った。






< 53 / 315 >

この作品をシェア

pagetop