俺の妹が可愛すぎて。
優花と風馬の母さんは、9年前交通事故で亡くなってしまった。
優花は7歳、風馬は6歳の頃だった。
風馬が赤信号の横断歩道に飛び出し、不運にもトラックが風馬に向かって走ってきていて、それを母さんが庇うようにしてはねられた。
即死だったようだ。
その話を母さんが風呂に入っている間に、俺は優花から聞いた。
『……あの頃、ママがいなくなってあたしは泣いてばっかりだった。…でも……風馬はなぜか泣かなかった。…死んでしまったって意味がわからなかったのかな。』
優花は少しだけ目に涙を浮かばせていた。
ケーゴさんからは、まだ母さんと付き合ってる時に『奥さんは事故で亡くなったんだ。』としか訊かされてなかった。
初めて優花からどういう状況で亡くなったかを訊かされた。
片親がいないのは、俺も同じ。
でも、父さんはどっかで生きてる。
でも、優花と風馬の母さんはこの世にはいない。
親が死ぬなんて、想像出来ない。
風馬も、もちろん優花も、
小さい時にその経験をしている。
風馬の気持ちを理解しようとしたって出来っこなかった。
だから風馬に、
『他人なんだから。』と言われて、何も言い返せなかった。
その通りだからだ。
他人の俺になんかに、風馬の気持ちがわかるわけないし、風馬が感じた辛い思いを分かち合えるわけがなかった。
風馬の言うとおり、本当の母親はたった1人しかいない。
俺の母さんを今更、母さんだなんて思えるはずがない。
『他人』なんだから。
それでも……
それでも、どうにか風馬と分かり合えたいと思うのは俺のワガママなんだろうか。
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