俺の妹が可愛すぎて。


「へ?……彼女?……いないけど?」

「え、そうなの?」


俺の返事に、優花はビックリしているようだ。


「え、なんで?そこ、ビビるとこ?(笑)」

「……いや……この前、寄り道した時に松丘くんがね、『ユキと透子ってお似合いだよな。』って言ってたから…荒川さんと付き合ってるのかと思って。」



ふーんと表情変えずに、そう話した優花の言葉を訊いていたが、腹ん中はなんかモヤモヤして落ち着かなかった。


晴はそう言って、本当にカップル同士のダブルデートを実現さそうとしてる気がして……。


………マジで、優花とどうにかなろうとしてんじゃん、アイツ。

そりゃ、紹介してって言われたけどさ……

紹介するより何より、もう自分からグイグイきてんじゃん。


……ってかなんで晴と優花のこと、考えるとなんかイライラすんだろ、俺。



吊革を持った腕に顔をもたれかけさせながら、悶々と考えていた。


「きゃっ…。」

「おっと……大丈夫か?」


電車が駅に近づいていく際のスピードが減速した軽いブレーキに、隣にいた優花がよろけて俺にしがみついた。

ものすごく抱きつかれてる形になる。


「え、あ、ごめんなさい…。」


優花は恥ずかしそうにそう謝ると、慌てて俺の身体から離れる。



うん……胸、おもいっきし当たってたもんね。


……今度は俺のせいじゃねぇからな、と言いたいが、優花が恥ずかしそうにしてるから、可哀想だから黙っててあげる優しい俺。


今の柔らかいあの感触で、イライラしてた俺の気持ちは一瞬にして吹き飛んだ。






駅に着き、隣の車両の風馬が降りたから俺らも少し遅れて電車を出た。

風馬が降りたこの駅は、見覚えがあった。


「……あれ…この駅って確か…。」

「うん……前、あたし達が住んでたとこ。……やっぱり、中学の友達と会うのかな?」


真っ直ぐ改札口へ向かう風馬を追いかける。

改札口を出た風馬は、何の迷いもなく目的地へと歩いているように感じた。















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