俺の妹が可愛すぎて。


スタスタと歩いていく風馬をさっきと同様、隠れながら俺と優花は追いかける。


ある曲がり角を曲がったところで、「もしかして……。」と優花が呟いた。


「…何?なんか心当たりでもあんの?」


「……う〜ん…。」


そう少し唸った優花は、何やら真剣な顔して考えているようだった。


しばらく無言のまま、風馬について歩いていたが、あるところで優花は風馬の行き先を確信したようだ。


「……ユキちゃん……

……あそこ、寄ってもいい……?」


そう言って優花が指を指した先は、小さな花屋さんだった。






* * *



『なごみ霊園』


大きな石に彫られた字にはそう書かれていた。


「……ここね……ママがいるの。」


優しいような、悲しいような…そんなふうに微笑んで優花は言った。


「……命日の日と、お盆のときに必ず三人で来るの。」


訊けば、今日は命日でもなかった。

なのに、風馬はなんでここへ来たんだろう。


学校が終わってから、何の迷いもなく、真っ直ぐここへ来た。


まるで…

『ここに来なければならない』


風馬の歩いていく背中を見たら、そんな風に感じてしまう。



五段ほどの階段を登った、空に近いその場所に優花と風馬の母さんの墓がある。


墓に先に着いていた風馬は、墓の前で静かに手を合わせていた。


その横顔は、あまりにも悲しそうに見えて……

しばらくして、風馬の閉じたその目から一筋の涙が頬を伝っていた。








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