俺の妹が可愛すぎて。
その涙に気づいた俺と優花は、思わず目を合わせた。
そして優花が黙ってコクンと頷くと、墓の前の風馬に近寄っていった。
「……風馬。」
優花がそう声をかけると、風馬はビックリした様子で俺と優花を見る。
そして、涙で濡れた頬を慌てて制服の袖で拭く。
「……んだよ……尾行してたわけ?…ストーカーじゃん、それ。」
相変わらず憎まれ口を叩く風馬を無視して、俺は平静を装った。
『大丈夫か?』『何泣いてんだよ。』
そんな言葉は、今の風馬には訊いてほしくない言葉だと勝手に思った。
「……ったく、墓参り来るんだったら掃除くらいしてやれよ。」
そう言って、さっき入り口で水を入れたバケツとブラシを墓の前に置いて初めて気づく。
「……あれ……綺麗だな。…風馬、お前掃除したのか?」
そう言いながら花受けを見て、それに気づいたのは俺も優花も同時だった。
「………それ、きっと父さんだよ。」
風馬がそう言って、顎で指した花受けには、まだ綺麗な花がいけてあった。
さっき、優花が花屋で買った花と同じ花。
『マリーゴールド、ママが好きな花。お参りするときは、必ずこの花を持っていくの。』
自分の家族が好きな花なんて、しかもそれをお参りの時に必ず持っていくなんて、
それを知っているのは『家族』しかいない。
命日でもないのに、ケーゴさんは一人でここを訪れていた。
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