俺の妹が可愛すぎて。
まだ綺麗な墓を、また更に磨き、優花が買ったマリーゴールドの花をいけた。
花受けにはマリーゴールドの花でいっぱいになった。
俺ら三人は、綺麗になった墓の前でしゃがみ込み、それを眺めていた。
誰も何も言わず、ただそれを眺めていて、夕暮れ時の静かに風がなびく中で話を切り出したのは俺だった。
「………なんとなくさ。風馬の気持ちには気づいてたんだよ、俺。」
「……どういうこと?」
そう訊いたのは優花だった。
風馬は黙っていた。
「……もしかしたら……風馬はこの再婚話……賛成じゃなかったんじゃないかって…。
……俺はさ、もう子供じゃないし、ワガママなんて言えないし、母さんが幸せそうならそれでいいやって思った。
……別に同情してほしくて、こんなこと言うじゃないけど……
……俺の両親、俺が幼稚園の時に離婚してんだよな。
父さんはほとんど家に帰らなくて、浮気もしてたって母さん言ってた。それが離婚の決め手だったらしい、中学ん時にそれ、聞かされたけど。
さすがにその記憶はちっちゃかったから、覚えてなくて……
でも……なんでか、母さんがよく泣いた記憶は覚えてて……。
だからか、ケーゴさんと一緒にいる今、笑顔の母さん見て、何にも言えなくなったっていうか……純粋に、母さんにら好きな人と幸せになってほしいって思った。
俺も、風馬の言うみたいに、俺の父さんは一人しかいないって、今も思ってる。
父さんの思い出なんか、ほとんどないし、写真でしか父さんの顔思い出せないけど……
どっかで生きてる、その父さんしか俺の父さんじゃないから。」
日が沈みゆく空の色は、しだいに鮮やかで優しい紅に変化していく。
眩しく、そして暖かい紅の光が俺らを照らしていた。
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