俺の妹が可愛すぎて。
「そろそろ帰るか、腹減ってきちゃった」
「あ、あたし今日晩ご飯当番だ。スーパー寄って帰らなきゃ」
そう言いながら、三人で階段をおり、霊園を出る。
もう暗くなりかけているせいか、霊園はもう誰もいなかった。
さっきまで泣いていた風馬も、もうすっかり泣き止んでいて、表情は今までよりスッキリしているように見えた。
帰り道では相変わらず、風馬はあまり喋らなかったけど、こうして三人で歩いて家に帰るなんて初めてで、俺はなんだか嬉しかった。
「……風馬、何食べたい?」
駅前のスーパーの入口で、買い物カゴを拾いながら優花が風馬に訊いた。
俺はその横で同じタイミングで、カートを取ろうとしたおばさんと押し問答になっていた。
「………牛丼」
ようやくおばさんがカートを持っていったのを確認して、次のカートを引っ張った俺は風馬の意見には反対だった。
「え〜俺、優花のオムライス食べたい」
一度、この前優花が作ったオムライスを初めて食べたが、あれは絶品だった。
たまごがいい感じにふわってしてて、綺麗な楕円に包まれたオムライス。
あれは店に出してもいいくらい。
俺も料理は下手な方ではないと思うけど、あのオムライスは真似できない。
「………オムライスなんて、ガキじゃん」
俺の意見には風馬も反対らしい。
ってか、やっと口ききやがった。
「……牛丼だって、邪道じゃん」
言い返してやった。
すると、風馬はチラッと俺を見る。
だけど、その目は今までみたいな鋭い目つきではなく、どことなく優しい目をしてた。
「……オムライスなんて別にいつでも食えるじゃん!」
「牛丼だっていつでも食えんだろ?」
「牛丼っ!!」
「オムライスっ!!」
風馬と俺との押し問答に、隣で優花はクスクス笑う。
初めて、『きょうだい』喧嘩みたいなことをした。
今日の晩ご飯は何を食べても美味しくなりそうな気がしたけど、風馬とのやり取りが楽しくて、しばらく風馬と言い合っていた。
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