俺の妹が可愛すぎて。



* * *


「やっべぇ…遅刻じゃん」


部活動が思いのほか長引いてしまい、携帯の時刻を見ると食事会の約束の時間を10分過ぎていた。

着信履歴に母さんから電話が何件かあり、急いでかけ直す。




『……っおそぉ〜いっ!!』


コール音が途切れたと思ったら、次に聴こえたのが母さんの怒声だった。


「ごめんっ!部活長引いちゃって。…みんな来てる?」

『来てるわよっ!もう、みんなお腹ペッコペコよ〜。ユキのバカ、バカ、バカ〜』


母さんは少し機嫌が悪くなると、こんな風に子供みたいにスネる。

晴に言わせれば、そこが可愛いとか言っていた。

俺からしたら、もういい歳なんだからいいかげんシャキッとしてほしいとも思う。

母さんの旦那になる人は、大変だなと同情する。


「ごめんって!あと、10分くらいで着くから!」

『バカ、バカ〜!『あ、もしもし?ユキ?』


母さんの怒声から、落ち着きのある声に変わった。


「あ、慧吾(けいご、以下ケーゴ)さん?ごめん、部活長引いてちゃって」


ケーゴさんとは、母さんの彼氏で、旦那さんになる人だ。

歳はたしか、母さんより3個上の40歳。

何度か家にも遊びに来たし、ご飯も一緒に行った。

ケーゴさんも俺と同じサッカー好きで、二回ほど一緒にサッカー観戦にも連れてってくれた。

すっげぇいい人。

母さんにはもったいないくらい。


『全然構わないよ。今日だって、急に決まったことだしな。急がなくて大丈夫だから、気をつけておいで』

「うん、ありがと。じゃあ、またあとで」


電話の向こうで、母さんがまだ「ユキのバカ〜バカ〜」と言っているのが聴こえた。


……もう飲んで酔ってんのかな…?(苦笑)



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