俺の妹が可愛すぎて。


差し出されたジュースを受け取り、普通にゴクリと一口飲んだ。

口の中が甘ったるい練乳ミルクの味でいっぱいになった。



『間接キス』
……ごちそうさまでした。



優花は何とも感じてないんだろう。


ボンヤリと風馬の試合を眺めていた。


「……あっんま。甘すぎだろ、コレ」


そう言ってしかめっ面で優花にジュースを返すと、「へへ(笑)でも美味しいでしょ?」って笑う。


「…いや、美味しくはなくね?」「え〜美味しいよ〜」と、何事もなく『桃イチゴ練乳ミルク』ジュースのことで優花と討論していると……



「ユキッーーーー!!!」


けたたましい叫び声とともに、全力でこちらに走ってくる晴が優花の背後に見えた。


あ、ヤバイ……


そう思ったのと同時に、晴は俺を掴み、すぐ近くの木の下へ連行された。

まるで猫の首もとでも掴むかのように、
俺は晴から身体の自由を奪われる。

それくらい晴の動きは素早かった。


「て、てめぇ!!今、ゆ、優花ちゃんの……!!!」


やはり、晴は目撃していた。

もう、もはや小声ではないその訴えになぜだか俺は余裕だった。


「『優花ちゃんの…』…なんだよ?」


こんな場面、前もあった。

俺は前みたいに余裕ぶった笑顔で、晴を焦らした。


「……優花ちゃんの……飲みかけのジュース……飲んだろ?」


怒りか興奮かわからない晴の表情。


ってか自分だって勝手に優花連れてったくせに。


「………飲んだよ。なんで、いけねぇの?」

「……なんでって……間接キッスじゃんっ!!」


なんでコイツ間接『キッス』って言うの?

キとスの間にちっちゃい『ッ』入れんなよっ!!


そんなことを冷静に心ん中で突っ込みながら、興奮してる晴に俺は言ってやる。



「……『兄妹』だからいいじゃん」



いつもなら認めたくなんかない、その事実をここぞとばかりに強調して言ってやった。


お前がさんざん俺に『お兄ちゃん、お兄ちゃん』って、優花の前で言ってんだろ?

それをわざわざ今、強調して言ってやったんだ。


それで俺に怒るのはおかしいよな〜?


俺は優花の『お兄ちゃん』なんだからよ〜?


あえて口には出さないがそう心ん中で晴に訴えることで、俺がさっき思った晴へのあてつけの意味がわかった。


















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