俺の妹が可愛すぎて。


「……っ〜……いっ…て〜……」


踏み込んだ右足に激痛が走って、俺はグランドに倒れ込んだ。


ピピーッとゲームストップの笛が微かに聴こえた。



「ユキ!晴!大丈夫か?!」


先生と周りにいた生徒達が心配そうに駆け寄ってきた。


どうやら、俺は晴とぶつかったらしい。

隣では晴も倒れ込んでいた。

でも、晴は擦り傷だけらしくてすぐに立ち上がっていた。



「……立てるか?」


先生に支えてもらいながら、立ち上がろうとしたけど、


「…っ……いて〜……」


やっぱり右足に痛みが走って、立ち上がることさえ出来なかった。


「ヤバイな…。病院行ったほうがいいかもな」

「俺、電話します!」


先生が呟いた言葉に、いち早く反応したのは持田で、持田は携帯から病院へ連絡してくれた。


先生は動けない俺の為に、他の生徒に担架を持ってくるように指示をしていた。


「症状がまだわからないうちは、じっとしておいた方がいい。担架持ってくるから、そのまま動くなよ」


先生の言葉にコクンと頷く。


「おい、松丘!大丈夫か?」


すぐ立ち上がって、その場を去ろうとする晴に先生が声をかけた。

晴はこっちに振り返ることなく、「大丈夫っす。保健室行ってきます」とだけ言って歩いて行った。



これは俺と晴だけ知る事実……



晴はわざと俺にぶつかってきた。


偶然の事故なんかじゃないーーー。





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