俺の妹が可愛すぎて。


それからすぐに救急車が来て、病院に運ばれた。

先生がついてきてくれた。


『膝関節靭帯損傷』と診断された。


膝に大きな力が加わったらしく、サッカーなどのスポーツではよくあるケガらしい。


大袈裟なくらいのサポーターを右脚にされて、しばらくは松葉杖の生活らしい。


学校へ戻ると、案の定松葉杖で帰ってきた俺にみんなは心配してくれていた。


「ユキちゃん、大丈夫?」


そんな中、何より心配してくれたのは優花だった。


「まぁ、なんとか。これ、かなり大袈裟だよな」


そう笑ったけど、優花はなんだか今にも泣きそうな顔をしていた。


「……それじゃ、今度の先輩の引退試合出れないな」


持田が俺の右脚を見て呟いた。


「……そうだな」


先輩の引退試合は6月。

俺はスタメンで出場が予定されていた。

こんなケガじゃ、まず6月の試合には出れない。


「あ、優花ちゃん、ごめん。ユキのカバンと着替え持ってきてもらってい?」

「え、うん。わかった」


持田はそう言って優花をこの場から離れさせた。

持田は優花が離れたのを見送ると、急に複雑そうな表情になる。

なんとなく持田が俺に話そうとしてることはわかった。


「………ユキ、あいつ……わざとだろ?」


やっぱり持田はわかっていた。

持田の言葉にイエスともノーとも言わない俺に、持田が声をあげる。


「……ユキだってわかってんじゃん。なら、なんで黙ってんだよ!こんなケガさせられたのに!いくら、ユキにムカついたからって」

「……持田、わりぃ。このこと、他の誰にも言わないでくれる?」

「……ユキ」

「………ごめんな」


持田にはそれしか言えなかった。


もし、俺が晴の立場だったらやっぱり俺がしたことは腹が立つと思う。


俺は晴の気持ちを知りながら、でも、それでも、ただ面白くないからって……


晴が嫌がるであろうことをした。

しかも、それが優越感でいっぱいになっていた。


晴を応援しなきゃいけない立場なのに。



俺は優花に恋をしてはいけない。


『兄妹』なんだからーーー。


そのキーワードを、さっき晴に自分で言ったんだ。


いつまでもその事実を認めない俺が、一番悪い。







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