俺の妹が可愛すぎて。


「ユキっ!」


心配そうな顔をして、透子が近寄ってきた。


「おぅ」

「『おぅ』じゃないわよ。なに?そんなに大変なケガだったの?」

「あぁ、『膝関節靭帯損傷』だって。こんなに大袈裟になると思わなかったけど」


さっきみたいに笑って言ったのに、透子も笑って応えてはくれなかった。


「……晴は?」

「保健室。晴のケガは擦り傷だけだから、そんなに対したことないけど…」


その透子の言葉を聞いて、俺は歩き出した。


「どこ行くの?晴のとこ?」


持田に呼び止められる。


「うん、ちょっと話してくるわ」

「……でも、晴すっごく機嫌わるかったよ?」

「だから話しに行くんじゃん」


今はやめたほうが…と言いかけた透子の言葉を遮った。


「わりぃ、優花に謝っといて〜」


そう持田と透子に言って、俺は歩き慣れていない松葉杖を使って、晴がいる保健室へ向かった。





風馬ん時と一緒で、このまま話も出来ないままなんて嫌だった。


晴が優花を好きになる……それだってやっぱり面白くない。


どっかで、なんで俺じゃダメなんだろうって思ってる。


まだ、葛藤してる。


でも、俺が晴に言った言葉は事実。


俺は優花の『兄ちゃん』。


いくら血が繋がってなくたって、それは揺るぎない真実。


だから……


だから、俺は晴の恋を応援しなきゃいけない。


晴と優花がうまくいけばきっと……


きっと俺は諦められる。



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