俺の妹が可愛すぎて。


保健室へ向かい、その扉の前で少しだけ入ることに躊躇した。


さっき自分で決意した思いが、晴の前で宣言することでそれを現実のものにしなければならない。


晴の前では普通でいること。


優花と『兄妹』でいること。


優花に『恋』なんかしないこと。



いっけん、簡単に思えることがこんなにも勇気がいることだとは思わなかった。



俺は一旦、一呼吸おいてその扉を開けた。


「おぅ、晴」


晴は保健室の椅子に座っていた。

晴は俺だとわかると、少しだけ気まずそうな表情を見せた。

松葉杖をついてる俺に、少し驚いた感じだったが、すぐに俺から目を逸らした。


「ケガ、大丈夫か?」


いつも通りに普通に声をかけた。



「俺、さっき病院行って『膝関節靭帯損傷』とか言われてさ〜、これすっげぇ大袈裟だと思わね?」


そういつも通り笑って、いつも通り晴に『バカじゃん』って笑い話にでもなればいいのにって思ったのに、晴は何にも言ってくれなかった。


晴の前の椅子に腰を下ろす。

相変わらず晴は目を合わそうとしない。


「……6月の試合出れっかな〜」

「………出れるわけねぇじゃん、そんなケガ」


呑気に言った俺の言葉とは裏腹に、晴のその言葉は怒っているように聞こえた。


「なんでそんな普通にしてられんの?俺がわざとぶつかったってわかってんだろ?そのケガだって俺のせい。全部、俺が悪い。なんで俺を怒らねぇの?」


いつだって笑っていた晴とは違う、真剣な晴がそこにいた。


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