俺の妹が可愛すぎて。


晴と保健室を出て、晴は部活へと向かった。


『先生と先輩には俺から謝っとく!ユキは何にも心配することないから!…ってケガさせた俺が言うなって話だよな』


ってまた泣きそうになってた晴だけど、そんな晴に俺はデコピンをしてバイバイした。

引退試合に出れなくなってしまったのは、俺にケガさせた晴のせいかもしれない。

だけど、晴をイラつかせた俺のせいでもあると思うから一概に晴を責めることなんて出来なかった。


「あ、ユキちゃん」


教室へ戻ると優花は待っていてくれたようだった。


優花はポツンと一人、席に座っていた。


「あれ?持田に言っといたんだけど、待っててくれたの?」

「え…あ、うん。持田くんに保健室行ったって聞いたんだけど…心配だったし…」


そう少し俯いて話す優花の目は、泣き出しそうに見えた。


「そっか、ごめんな」


そう言いながら、俺は優花がまとめてくれたカバンを背負う。


静かすぎる教室と、晴にさっき決意したばかりの思いが俺の気持ちをざわつかせる。


「……じゃ、帰ろっか。今日の晩ご飯担当は優花だよな?何すんの〜?」


なんだか暗い優花とは反対に、俺は明るい口調で話す。

けど、優花は黙ったまま俯いて立ち上がろうとしない。


不思議に思って、俺は「優花?」って声をかけて、顔を覗き込む。

すると、優花の表情は今にも泣き出しそうで、俺に覗き込まれて嫌だったのか、その顔を両手で隠した。


「優花……?……どうしたんだよ。…なんかあった?」


しゃがみ込もうと思ったが、右脚が痛くて身体が思うようにいかない。

代わりに俺は椅子に座り、泣いている優花のそばに寄り添うように左足で椅子を引き寄せた。


「……ゆ〜か?どした?」


泣いている優花は、子どもみたいに繊細に思える。


守ってあげたい……


そう思ってしまう。





< 90 / 315 >

この作品をシェア

pagetop