俺の妹が可愛すぎて。


「………俺……先輩たちが思ってるような、ユキの代わりになんか…なれないと思う……それでもいいの?」


俺だけならまだしも、晴や持田の期待の眼差しが風馬にとってはプレッシャーになっているんだろう。

風馬は不安そうに、俺にそう訊く。


「……誰も代わりになるなんて思ってねぇよ」


不安そうな風馬の頭をポンッと叩く。


「……風馬、自分のサッカーをしろ。俺はあえて、俺だったらこうするとかアドバイスはしないから。ってか、サッカーってそういうもんじゃね?

ある程度、作戦とか策略とかあることはあるけど……

天候、気候、敵の動き、敵とこっちの精神面とかでも、そういうのって変わってくるじゃん。

味方チームとのコミュニケーション、タイミング…それもすっげぇ大事だけど、

まずは、自分のサッカーしようぜ、なっ!」


そう風馬の肩をポンッと叩くと、風馬は少し微笑んで深く頷いた。


風馬の気持ちを考えると、ちょっと酷なことを頼んでしまったかなと少し反省した。


6月のサッカー試合に出るメンバーなんて、ほとんどが三年と二年ばっかで入部したての一年がスタメンで出ることなんて、よっぽどのことがない限りあまりない。

しかも、風馬以外にも他に一年の部員はいるのに、それはそっちのけで風馬をスタメンで入れるなんて、風馬だって他の一年部員だってすっごく複雑。


風馬にはそのプレッシャーがある。


だから、そのプレッシャーに負けないように、次期キャプテンの俺が支えてやらないと!

まぁ、精神面ではアイツ強そうだから大丈夫かな。



そんなこともあり、次の授業中は勉強なんてそっちのけで次の試合のことばかり考えていた。


地理の先生は独特で、独り言のようにブツブツ話しながら、ひたすら黒板にあれこれ文字を並べていくので、ノートをとる側は本当に苦労する。

そのせいか、この地理の授業は真剣に話を訊く生徒は少なく、こっそり携帯をいじったり、こっそりゲームしたり、堂々と寝たり…そんな生徒ばかりだ。


だから、俺も授業なんか訊かずサッカーのことを考え、少しウトウトしかけていた。


すると……


サッ………


隣の席の優花から、小さく折りたたんだ手紙のようなものが飛んできた。



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