あなたが作るおいしいごはん【完】
力強く話す私を見た彼は
やがて優しく目を細めると
「…萌絵にそう言って貰えると
俺も嬉しいよ。
じゃあ、ちょっと待ってろな?
今日も大事なお姫さまが喜ぶような
美味いメシを作ってやるよ。」
そう言いながら
バッグとジャケットを持った。
『お姫さま』の言葉に
照れ臭くなりながらも
「…私も手伝います!!
カズさんのご飯覚えたいです。」
そう言った私に彼は
“チュッ”と頬にキスを落とした。
「…萌絵はそうやって前向きで
可愛い事言ってくれるね。
…ありがとう。
じゃあ、鰆とパン粉と里芋と人参と
胡瓜出しといてくれる?」
彼は優しく微笑んで頭を撫でると
クローゼットのある部屋へと行った。
キスされた頬が熱を灯されたように
じんわりと紅くなるのを抑えながら
私は新しいテキストと雑誌を
本棚に仕舞うと
エプロンをつけてキッチンへと行き
彼から言われた通りの材料を
冷蔵庫から出した。