あなたが作るおいしいごはん【完】

田宮さんが義妹のミレイさんを庇って

私に嘘を言ってるようには

思えなかったから

それが真実なんだと思うしかなかった。


だとしたら…。

私は俯きながら

「…じゃあ…あの。
カズさんは…その…。
あのキッチンスタジオには
…女性を誰も入れていませんよね?」

彼を信用していないワケではないけど

気になっていた事を田宮さんに

恐る恐る聞いてみたその時


『……入れるワケないだろ。』


田宮さんの背後から

聞き覚えのある声が聞こえて

私の肩が微かにビクッと震えた。


そっと顔をあげた私の視線の先には

『…少しだけ会話が聞こえてたけど
何かあった?
ねえ…そんな所で
2人で一体何を話していたの?』

教室で身につけていた

濃い青色のエプロンをたたみながら

いつもとは違って笑顔がなく

やや不機嫌そうともとれるような

表情を浮かべながら

彼がこちらに歩み寄ってきた。


同じく少しだけ驚いた田宮さんは

『…あっ、カズ先生…お疲れ様です。』

にこやかに後ろを振り向くと

『…すみません。
義妹の事で浅倉さんに
誤解を与えてしまったみたいで…。』

そう言って話を続けた。










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