あなたが作るおいしいごはん【完】

田宮さんは彼に対し

ミレイさんが訪ねて来た事などを

私の代わりに簡潔に説明した。


『…そう言う事ですか。』

一部始終を聞いた彼は

『…今日もお疲れ様…萌絵。』

と、頭をポンポンと撫でた。


先ほどの不機嫌な表情が和らいだのを

田宮さんは安心したように確認した後

『…じゃあ、デスクに戻ります。』

と、私達に軽く一礼して

自分のデスクへ戻って行った。


「………。」

彼と二人だけで残された

静まりかえった空間の中で

私は何を言っていいのか

わからなくて気まずかった。


田宮さんが一部始終を

説明してくれていても

彼とミレイさんの関係を

私が気にしていた事や

田宮さん経由とは言え

彼がミレイさんに煮物を渡した事に

私が嫉妬した事も恐らくバレバレで

女性入室禁止にしているのに

彼がミレイさんを

特別にスタジオへ入れて

個人的指導をしていたのではないかと

私が一瞬疑った事も

頭が良い彼ならお見通しだと思う。

沈黙の中

『…俺が他の女性に煮物をあげたのが
萌絵にはそんなに不愉快だった?』

彼が静かに口を開いた。















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