あなたが作るおいしいごはん【完】

こんな時

どんな反応をしたらいいかわからない。


素直に頷いてもいいのか

首を横に振って否定した方がいいのか。


彼がミレイさんに煮物を渡した事は

何ともない事だったかもしれないし

ミレイさんが好きな人の為に

和食を上手く作りたくて

田宮さん経由で聞いた彼が

その気持ちを汲み取って

親切心でした事を

本来なら私が嫉妬する資格はない。


料理研究家である彼にとって

一人でも多くの人がおいしいごはんを

作って食べて貰える事が何よりの喜び。


……それに嫉妬するなんて

鬱陶しいと思ったかな。


すると、黙ったままの私に

『…別に怒らないから
不愉快だったらそう言って貰える?』

彼の指が私の頬にそっと触れて

そのままスリスリと撫でられた。


…ドクン…ドクン。


彼から与えられる大好きなこの行為。

優しい指に撫でられ私の胸が高鳴った。

『…ほら、萌絵、どっちなの?』

彼はなおも私に返答を求めた。


「…………ごめんなさい。
カズさんにとって
普通の事だったかもしれないけど
私は…少し嫉妬しました…。
……ごめんなさい。」


私は観念したようにポツリと呟いた。
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