あなたが作るおいしいごはん【完】

『…萌絵の分の夕食は
冷蔵庫に入れてあるから
レンジで温めて食べればいい。』


教室は夕方からだけど

午前中はテレビ局にて

【メンズキッチンTV】の

打ち合わせがある彼は

朝食を済ませると

サッと身じたくを始めていた。


そんな彼の背中を見つめながら

「…ありがとう…カズさん。」

ポツリと私はお礼を言うと

『…本当に大丈夫なのか?』

彼は私の方に振り向くと

そっと私の肩に手を置いた。


『…最近の萌絵は様子がおかしいし
そうやって直帰したがる…。
俺は…萌絵があのビルで
何かあったんじゃないかとか
教室の生徒さんから
何か言われたんじゃないかとか
気になって仕方ないんだよ…。』

そう言って

ジッと私の顔を覗き込んだ。


…ドクン…ドクン…。

彼の綺麗な瞳が私を捉え

ギュッと胸が締め付けられそうになる。


「…あっ…あの…。
カズ…さん…顔が近いよ。」

私は戸惑いながら手を左右に振ると

「…本当に…大丈夫だから。
何もないから…。
本当に…レポートがあって…。

ただ…集中したいから…だよ。
心配して貰わなくても…大丈夫。」

そう言って精いっぱい笑って見せた。




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