あなたが作るおいしいごはん【完】

彼は私の様子に

もう少し何か言いたげだったけど

はぁーっと息を吐くと

バッグを持って玄関へと進み

彼は靴を履いた。

「…行ってらっしゃい…カズさん。」

私は彼を見送ろうとした時

『…萌絵。』

私の名前を呟いた彼が

くるりと私の方に振り向いた。

……うん?

首を傾げた私を見つめたまま

彼はバッグを床に置くと

『…ねぇ。』

と、口を開いた。

『…萌絵が本当に何もないならいい。
だけど…あと半年したら
俺達は正式に結婚するんだし
俺は萌絵を守る義務があるから
くれぐれも隠し事はするな。

…何かあってからでは遅いし
俺に気を遣わなくていいから
困った事があればすぐに言えよ!!』

と、彼はそう言いきると

私の左手をそっと持ち上げ

あの時からずっと

薬指にはめたままの婚約指輪に

そっとキスを落とした。

…ドクン…ドクン

胸が高鳴った私に

彼はいつもの微笑みを浮かべながら

『…じゃあ行くから。
学校行く前の戸締まりは
ちゃんとしていくんだぞ?』

と言って私の頭を撫でると

床に置いてあるバッグを持ち

玄関のドアを開けて

彼はテレビ局へと出掛けて行った。
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